Rug catalog
世界には、その土地の歴史や人々の暮らしを映し出す「トライバルラグ(部族の絨毯)」が無数に存在します。ラグには、風土や歴史に育まれた豊かな文化が色濃く図案に表れ、機会織りでは表現できない織り手の癖や想いが表れます。
Pakistan / Lahore
「パキスタンの心臓」と称される芸術と文化の中心都市、ラホール。ムガル帝国時代から続く豊かな歴史と文化が息づき、訪れる人々を魅了してやまない、活気に満ちた場所です。かつてムガル帝国の都が置かれた場所。そのため、市内には壮大で優美なイスラム建築が数多く残されており、その緻密で優美なデザインは、この地に住む人々の美的センスを育んできました。
そんな豊かな文化的土壌を持つラホールの職人たちが、中央アジア遊牧民の力強いデザインと出会ったとき、新たな絨毯の歴史が幕を開けました。彼らはトルクメン絨毯の伝統的な幾何学模様や象徴的な模様を正確に受け継ぎながら、ラホールならではの洗練された感性と卓越した技術を注ぎ込みます。
ラホールラグの魅力は、部族が作り上げるものには見られないカラーバリエーションの豊富さがが特徴で人気。薄手ながら目の詰まった物がほとんどで軽量ながら丈夫で扱いやすいのが特徴です。
Around Afghanistan / Baloch
アフガニスタン、そしてパキスタンとイランにまたがる広大なバローチスターン地方。何千年もの歴史に育まれた、深く、強く、そして美しい文化と、不屈の魂を持つ人々が暮らしています。
広大な乾燥地帯と荒涼とした山々という過酷な環境で生きるバローチの人々は独自の言語と文化、そして強固な部族社会の絆を何よりも大切にしています。
バルーチ族と呼んでいますが、バローチ族とも呼んだり、幾つか呼び方はあります。アフガニスタン北⻄部、イラン東部、パキスタンをまたにかけて分布する元々は移住型放牧⺠族。絨毯やキリムといった手織物は、この地域全体に共通する文化的な言語と言えるでしょう。一枚の織物の中に、部族の紋章、日々の暮らしの風景、そして作り手の喜びや祈りが織り込まれています。それらは、政治的な境界線では決して分けることのできない、人々の魂の繋がりを静かに物語っています。
元来、遊牧気質のある部族であることから絨毯、キリムなどの織り、デザイン、色使いには大変自由度が高く、多色使いの色彩感覚もバルーチ族の魅力の一つ。現在は定住を好むグループもあり、一重にバルーチ族といってもエリアによって織り、色使い、デザインにも違いがあるところもバルーチ族の織るラグの楽しみ方です。
Afghanistan / トルクメン
トルクメン族の始まりは現在のトルクメニスタンの地域を中心とした騎馬⺠族だったが、徐々に範囲を拡大し現在はイラン東北部、アフガニスタン北⻄部、またごく少数がパキスタン内に居住しています。彼らは新しい土地に根を下ろしながらも、故郷の記憶と伝統を生活の隅々にまで宿し続けました。トルクメンの人々にとって、絨毯織りは単なる生業ではありません。それは、自らのルーツを証明し、次世代へと受け継ぐべき「文化そのもの」なのです。
元来は非常に厳格な部族で、部族内をいくつかのグループを中心として構成されており、それがギュルと呼ばれる家紋のようなものをモチーフに絨毯を製作していたことからイギリス、オックスフォード大学の絨毯学部では研究対象とされ、特にヨーロッパでは評価が高く、文化的遺産としても高く評価され、サザビーなどのオークションにも多く出品されています。
こちらはトルクメン族が織るホジャロシュナイ(天然草木染による深い紅色が特徴)。 高品質のウール、技術のある織り手のみで丹精に作られたホジャロシュナイは、今となっては年間数十枚のみしか出荷されないというレアもの。
アフガニスタンの大地で紡がれる誇り
アフガニスタンで織られるトルクメン絨毯は、伝統的なデザインを守りながらも、アフガニスタンの羊から採れる上質で光沢のあるウールをふんだんに使うことで、独自の発展を遂げてきました。その緻密で堅牢な織りは、遊牧生活の必需品であった歴史を物語っており、実用性と芸術性が見事に融合しています。
紛争や政情不安といった幾多の困難に直面しながらも、アフガン・トルクメンの人々は、この絨毯織りの技術と文化を頑なに守り抜いてきました。一枚の絨毯を織り上げることは、彼らにとって家族を養う手段であると同時に、自らの民族としての誇りを世界に示す行為なのです。
一枚の赤い絨毯には、中央アジアの草原を渡る風の記憶と、アフガニスタンの大地に力強く根を張って生きる人々の、静かで熱い想いが織り込まれています。その手触りと深い色彩の奥に、ぜひ彼らの壮大な物語を感じ取ってみてください。
Afghanistan Mini Lug - CHOBI-
手織りトライバルラグの中からどんなシーンでも使いやすいミニサイズ。トルクメン族が織ったもので、2010〜2020年の間にトルクメン族により織られるチョビラグです。チョビとはトルクメンの言語で”草木”を表します。
現代絨毯において100%天然染色というのは実は少なく、草木や果物、昆虫などと共に合成染料が使われている物が多く存在します。
そんな中、このチョビラグはトルクメンが100%天然染色にこだわり織られた物です。
デザインもトルクメン族の作る伝統的なそれとはカラーリング・紋様ともに大きく違い、自由度の非常に高い柔らかく温かみのある印象をもたらしてくれるアイテムです。