アートユニット「海と梨」が紡ぐ世界ー創作の原点ー part1
アート絵画やジュエリーブランド「Leon art jewelry」の制作・運営を行うユニット「海と梨」。2019年に活動を開始し、それぞれの感性を重ねながら、唯一無二の表現を紡いできたお二人。
本記事では彼らの出会いや創作の原点をお伺いしました。
―― まず、普段、ユニットとして、どのような活動をされているのか、ご紹介いただけますか?
海斗さん:主に、絵画作品の制作とジュエリーブランド「Leon art jewelry」の制作・運営の2種類の活動を行っています。
ーーお二人がユニットとして活動するようになったきっかけは?
海斗さん:2019年の木村タカヒロさんのオンライン絵画教室が最初の出会いです。お互いの作品が気に入っていたこと、年齢や住むところが近いことから連絡を取り合うようになりました。
梨乃さん:教室には主婦の方や年齢層の高い方が多かったんですけど、珍しく年齢が近くて。親近感がありました。
ーーその時のお互いの印象は?
梨乃さん:毎月、課題にそった絵を提出し、皆で鑑賞し合うというものがありました。その時、時任海斗ではなく海という名前で活動していて、絵だけをみて、女性だと思っていました。花とか綺麗な絵を描く人だなというイメージがありました。
海斗さん:オンライン教室には僕が先にいて、りのが後から入ってきました。コラージュ作品がかっこ良く、シャープな感じだったんですけど、実際に話してみるとやわらかい人でそのギャップに驚きました。
ーー初めて、対面で会った際はどのような会話をされたのでしょうか?
海斗さん:出会ったのは万博記念公園が一番最初でした。作品や絵の話をしたような印象があります。
梨乃さん:初めて会ったときに実際に海斗が描いた絵を見せてくれて。それまではオンラインでしか、見れていなかったので実際に見れたことを覚えています。
ーー実際にお二人とも作品を持ってきていたのでしょうか?
梨乃さん:私は持っていませんでした。
海斗さん:僕だけで、ファイリングしたものを持っていきました。
ーー万博記念公園で会った時の思いや印象などは覚えていますか?
海斗さん:作品のイメージが先行していたので、ギャップを感じました。
梨乃さん:時任という名前がとってもかっこよくて、今後会うことがなくても、自分の芸名を時任にしたいと思いました。
ーー確かに、あまり聞いたことのない苗字ですよね。
梨乃さん:なので、別れたら、こっそり芸名にしようと思っていました。
ーーそうなんですね(笑笑笑)ありがとうございます。
ーーここからはお二人の創作表現について、お伺いしたいと思っています。まず、作品作りで大切にしていることは何でしょうか?
海斗さん:アクセサリーと絵の制作はかなり違います。アクセサリーは一人ずつ、別々に完成に至るまで制作しますが、絵は一枚の画面に二人同時で描くスタイルなので、感覚的に違いますね。アクセサリーは自分が美しいと思うものを作るのですが、お客さんの顔を思い浮かべ、この人が好きそうだなというのをある程度、イメージして作っています。
絵は二人で同時に描くので、わざわざそんなことしなくていいのに、やっているんです。つまり、不自由であることが大前提となっていて、それを受け入れるようにしている。例えば、自分がこう描きたいと決めていても、梨乃が違う風に書いても受け入れるということは決めています。
梨乃さん:二人で活動してから、日常の中に奇跡みたいなものがちりばめられていると感じることが多くなって。自分が見つけた神秘的な気持ちや自然を見て感動して、いつもの風景がきらめいて見える様子をアクセサリーに永遠に入れたいという気持ちがあります。
アクセサリーは誰かに身に着けてもらうので、この先ずっと持ってもらえるようなお守りになったらと思って、制作していますね。
ーーお二人の制作に対する思いをお伺いして、全く同じではないですが、共通している部分があるなと感じました。特に、アクセサリー制作の際に、お客さんの顔を思い浮かべ、誰かに届けたいという点がお二人に共通していると思います。お二人が言う「誰か」というのはより具体的に絞ると、「こういう人に届けたい」というのは思い浮かんでいますか?
梨乃さん:結構カラフルな作品なので、作品作りの原動力は色が綺麗だなあという感動が大きいんです。色が綺麗だなと思う感動は老若男女関係ないなと思っていて。普段私たちがあまり話さないような年齢層の人々と感動し合えたら、嬉しいです。
海斗さん:それは年齢、男女、国籍も関係なくて、感覚的なものが近い人たちに向けて、作っています。
ーー私もアクセサリーを初めて拝見した時に、「誰にでも届けられる」ような感覚を持ったので、今回詳しくお伺いできて、良かったです。
ーーでは、アクセサリーについて、お聞きしたいのですが、梨乃さんが書いた詩とアクセサリーを組み合わせる発想はどのように生まれたのでしょうか?
海斗さん:元々、梨乃が詩に興味があって。詩をたくさんの人に見てもらう場を作るのが難しかったので、アクセサリーと詩を組み合わせることで、アクセサリーもお守りぽくなり、詩も読んでもらえるというアイデアから、発想しました。
梨乃さん:私はおみくじが好きなんです。自分が選んだものに言葉がふとついてて、「あ、これ、今の自分の気持ちにぴったり」という風に楽しんでもらえたら、面白いなと思って、始めました。
ーー私も初めて見た時に、アクセサリーと詩の融合がとても面白かったです。「なぜ、この詩がついているんだろう」ともっと話したくなるような感覚がありました。実際に、お客様と接していく中で印象に残っていることはありますか?
海斗さん:アクセサリーを見て、選ぶ方もいるんですけど、自分が今必要としている言葉に出会って、購入される方もいるんです。その瞬間は奇跡のようで、「自分の気持ち×詩の言葉×アクセサリー」の好みが一致して、お客さんに届く瞬間はとても感動しますね。
ーー言葉はアートが苦手な方にも直接的に伝わる手段だと思います。言葉で表現する時と絵という少し抽象的な表現を用いる時ではどのような感覚の違いがありますか?
海斗さん:詩の言葉と普段話す言葉は違います。普段話す言葉の間に、抽象度の高い詩があるんです。間を繋ぐものが詩の存在だと思います。
梨乃さん:詩は作品に入るための扉だと思っています。
ーー絵画作品のタイトルなども自分の表現をより伝えるためというよりも、お客さんがその作品に入るための扉のような役割を担うようなイメージをお二人とも持っているのでしょうか?
梨乃さん:そうですね。クッキー缶があるとすれば、クッキーが絵・作品で、缶のデコレーションが詩のようなイメージですね。
連載第1回はここまで。
次回はお二人の絵画制作やライブペインティングについて、深掘りします。
【編集後記】
お二人の現在に至るまでの軌跡を辿り、お二人に互いを尊重し合う姿勢があるからこそ、人の心を動かす作品が生まれるのだなと感じました。
互いの異なる視点を受け入れながら、共に描く絵。
身につける人の気持ちに寄り添う、詩とアクセサリー。
どの作品にもお二人の想いが込められています。
多くの方にその想いが届き、また次の人へつながっていく。お二人の作品が持つ人をつなげる力を強く感じました。
【展示情報】
「日常と夢のあいだ」海と梨 展
海と梨作品、時任海斗、時任梨乃それぞれの作品など30点を超える作品が一同に並びます。作家も毎日在廊しますのでぜひ足をお運び下さい。
2025年8月27日(水)~9月2日(火)
[10時~19時 / 最終日17時終了]
伊勢丹浦和店 6階 ザ・ステージ#6アート〈入場無料〉
詳しくはこちら〈https://galleryuehara.com/uminashi-iu-m/〉
インタビュアー・書き手:水谷琴音