アートユニット「海と梨」が紡ぐ世界ー創作の原点ー part2

アートユニット「海と梨」が紡ぐ世界ー創作の原点ー part2

アート絵画やジュエリーブランド「Leon art jewelry」の制作・運営を行うユニット「海と梨」。2019年に活動を開始し、それぞれの感性を重ねながら、唯一無二の表現を紡いできたお二人。
本記事ではライブペインティングを通して、お二人の創作への姿勢や共同制作について詳しく伺っていきます。

Part1はこちら

—―お二人で描かれている絵画作品やライブペインティングについてお伺いさせてください。

観客の前で実際に制作するときとアトリエで制作するときの違いや、そのときの感情などは覚えてらっしゃいますか。

海斗さん:そのときは割と人通りの多いところでやるっていうことだったので、結構意識はしていて。一つのゴールに向かって行くのも面白いのは面白いと思うんですけど、それよりは何かドラマチックな展開であった方がいいなとか思っていて。それで途中でまっすぐゴールに向かっていきそうになったら、ちょっと1回そこ潰して、違う展開を出そうとか。そういうことは意識して、そのときは変えてました。

—―アトリエで制作するときよりも、人の前でやるときの方が、想定外のものを生み出したいみたいな気持ちが強まるんですかね。

海斗さん:そうですね。より一層思ったというか、それはすごい強く思いましたね。誰かが見てくれてるから、楽しませたいとか。あとはライブペインティングだから見られるものであると。出来上がった作品も鑑賞するのもいいんですけど、その中にいろんなものが層のように、地層のように積み重なっていく。

ライブペインティングでは、その地層の積み重なる瞬間を見てもらえる。ライブペインティングだからできる、見られることだなと思って、より意識してやったっていう感じですね。

 

—―梨乃さんは何か思い出すことはありますか。

梨乃さん:ライブペインティングなんで、そのときに自分の中に湧き上がってきた思いとか、周りの状況とかに集中して、周りの状況に反応するようなアイディアとか、それに集中して描いてたのみですね。

—―ライブペインティングの際には、会場の空気や音、香りなどにどれくらい影響を受けましたか。

海斗さん:それはかなり大きな部分というか。

梨乃さん:3人目ぐらいに影響を受けてるよね。

海斗さん:それもあって、音楽の演奏と一緒にライブペインティングをすることもあるし。

外部の影響を取り込みたいというか。二人で描くっていう時点で自分にとって梨乃は異物というか。一人で描くときとは違って、複数取り込んで、どんな作品ができるかっていう実験でもあるので。

あとは単純に、上から塗りつぶしたかもしれないですけど、なんかそこにブルーボトルコーヒーがあって、マークが見えたので、なんかボトル描いてみたりとか、そういう直接的なことだったりとか。あとは外で二人で描くときは、落ちてる木の枝拾ったりとか。この前アートフェアでやったときは、会場に行くまでに道端で石とか拾ったりして、それを使って描いたりとか、そういうことをしました。

 

—―二人で作ることの面白さと難しさはありますか。

梨乃さん:2019年から制作を始めて、より毎日毎日出会う人とか、今自分が生活してる一つ一つが、すごく純粋にハッピーっていうか。嬉しいなっていう気持ちがずっと沸き起こってきて。それを絵に取り込みたい。ハプニングとか外からの影響とか、今の自分を取り巻く状況とかも合わせて描きたいっていう気持ちがあって、2人の絵にするときはそれを表現したいなっていうのがあった。難しさっていうのはあまり意識してないけど、結構自分が適当なところがあるんで。できた作品は全く自分が思ってなかった、思ってないようにできてます。それはそれでオッケーっていうふうに思ってるんで。

海斗さん:やっぱり二人で描くからには、自分の想像の範囲の外にあるものを作りたいなっていうことを期待して書いてて。そこが2人で描く面白さというか、やっぱり難しさでもある。

梨乃さん:特に活動を始めたのがコロナと同時にスタートみたいな感じだったんです。社会的な活動が全部ストップになった中で、より一つ一つの出会いって当たり前じゃないんだなっていうのがありました。

—―誰かと出会っていくことでいろんな影響も受けますし、それはお二人の人柄もあるのかなと思いました。作品制作に限らず、お互いの尊敬しているところなどはありますか。

海斗さん:そうですね。僕はやっぱり、彼女は自分がじゃなくて、なんか人にまず何かしてあげたいっていう姿勢がすごく強いというか。基本的にそういう人なので、そこがすごい尊敬するっていうか。何かを人に求めるんじゃなくて、人に何かしてあげたいって常に思ってるところが、尊敬できるなって思うところですね。

梨乃さん:そんなことないけどね。自分にないところを持ってるですかね。人に優しい。

—―自分でないものを感じるっというのは、作品制作とかをしているときも感じることがありますか。

梨乃さん:ありますね。自分がちっちゃく悩んでた部分とかを、バッと塗りつぶして解決してくれたりとか。一人でこう悩んでた時とかも、次に進めるように描いたりとかする時に、ああ、さすがやなと思います。

—―創作を開始するときに、一番最初に意識することや何か決めていることなどありますか。

海斗さん:決めてることはやっぱり、お互いを受け入れることっていうだけ。

梨乃さん:そうだよね。

海斗さん:なんか自分がこうしようと思ってたところをもう一方が違うことをしても、それは受け入れるっていうこと。ルールとして唯一あるルールというか。そうじゃないと二人で描く意味がないので。

あとは場合によっては、例えば1枚の絵を描く時間に音楽流して、この音楽が終わったらこの絵は終了とか。なんか実験的にそういう制約を決めてやっていくというか。あとは筆を使わずに描いてみようかとか。そういうことを事前に絵ごとに決めたりもしますし、何も決めないこともあるしって感じかな。

—―本当にいろんな条件の中で常に挑戦をしてらっしゃるんですね。時間が短いことなど、その実験をしている時に、ただお二人で書くっていう時と違う、今までにないものが生まれたなみたいな経験みたいなのはありますか。

海斗さん:例えば具体的に言うと、時間が少ないと、勢いをもって作品に向き合うので。できた絵に勢いがあったりとか、ゆっくり描く線とふさって描く線がやっぱり違うんで。そういう線のディテールの違いとかもやっぱり出てきます。

梨乃さん:私たちが教わっていた木村タカヒロさんがいつも言ってたのは、「絵はまぐれ」って言ってたんです。それはちょっと頭にあって、いろんなことをして、まぐれをわざと起こさせてるような感覚はあります。

—―木村さんの影響もかなり大きかったと思うのですが、お二人が木村さんからの指導後に大切にしていることはありますか。

海斗さん:木村先生の教室の特徴として、技術を教えないっていうのがあって。というのは、例えばデッサンだったりとか、色の塗り方とか作り方とか構図とかそういう絵の基本、基礎みたいなところを教えるんじゃなくて、そういうさっき梨乃が言ってた「絵はまぐれ」みたいなところとかそういう考えを主に教えてくれるっていうようなスタイル。

特に意識しているのは、偶然を必然にしていくみたいなところ。絵を隅々まで観察して、無意識的に描いたところをジャッジしていって、意識していくことで必然にしていくみたいな。

そういうことはすごい自分の中で大きい考えというか、教えてもらったことですね。偶然を必然にしていくっていうのが世の中で重要なことで。あまり大きいことを言いすぎるとあれですけど、人生においてもあるんじゃないかな。

ちゃんと向き合うっていう話だと思う。絵の要素一つずつをちゃんとジャッジしてあげるっていうのが、絵の制作において重要なことだなと思ってます。

—―お二人で描いた作品の中で、特に思い入れのあるものって何かありますか。

梨乃さん:でもやっぱりニュウマン横浜で描いた絵とか、今見てもすごい好きです。

描いた時間は短かったと思うんですけど。

—―2時間ぐらいでしたね。梨乃さんはこの特に思い出のある部分、印象に残ってる部分はありますか。

梨乃さん:うーん、必死で覚えてないですけど。

でも会場のニュウマン横浜がすごいスタイリッシュで、光がいっぱい入ってくるようなイメージだったんで、きっとそういう空気感とかを絵の中に入れようと思ったんだと思います。

 

 


連載第2回はここまで。
次回はお二人の創作のこれからについて深掘りします。

 

【編集後記】

今回はお二人がお互いを受け入れ、そして世界を受け入れて創作されていることが伝わってきました。

一つ一つの出会いが当たり前ではない。
偶然を必然にしていく。

お二人の世の中に対する好奇心と優しさを感じます。

作品をじっと見つめてしまうのは、その空気感が作品に表われているからかもしれません。

インタビュアー・書き手:水谷琴音・上山史華